光のパブリックポリシー13―高齢者と照明2


認知症は国際的に注目されている疾患であり,その患者数は世界的に年々増加している.世界の認知症患者数は2015年約6,480万人だったが,2050年には1億3,200万人と2015年の3倍に達すると国際アルツハイマー病協会により予測されている.

日本では平成29年度高齢者白書によると、2012年は認知症患者数が約460万人、高齢者人口の15%という割合だったものが2025年には5人に1人、高齢者人口の20%が認知症になると予想されている。

認知症は、その原因となる疾患により分類される。最も多いのがアルツハイマー型認知症で、他には血管性認知症やレビー小体型認知症などがある。

アルツハイマー型認知症を引き起こす原因として、脳内にアミロイドβという物質が蓄積し脳の神経細胞が破壊されることが知られている。アミロイドβは、睡眠障害が起きると脳内に溜まりやすくなり濃度が上昇するため認知症を発症する可能性が高まることが分かっている。また、同じくアルツハイマー病の原因となるタウたんぱく質は睡眠によって取り除かれることが分かってきたという。
認知症に因果関係が高い物質が、どちらも睡眠不足や睡眠障害によって影響を受けるため、良質の睡眠の確保が認知症予防には重要な条件となる。
2021年4月20日に英科学誌「Nature Communications」に発表された研究ではイギリスで8千人近い人を50歳の時から約25年間追跡調査し521件の認知症の症例を調べた結果がある。
それによると平日の睡眠時間が6時間以下とした人は、通常7時間の睡眠をとる人達よりも約30年後に認知症と診断される割合が30%程度高いことが判明したという。
質の良い睡眠を得ることが、認知症の予防や認知症の進み具合の抑制に効果があるということが実証され、認識され始めているのである。

良質の睡眠を得るためにはサーカディアンリズムに沿った照明の光の利用が効果的である。次回に詳しく取り上げる。