光のパブリックポリシー16―高齢者と照明5


日本において2020年の高齢者の就業率は25.1%となり、9年連続で前年に比べ上昇している。就業率を 年齢階級別にみると、65~69歳は49.6%、70歳以上は17.7%となっている。また、労働力人口の総数に占める65歳以上の割合は13.4%となっている。*1

毎月一定の収入がある安心感が得られる、社会との繋がりを感じられて満足感を得られる、規則正しい生活で健康維持ができるなどの理由で、高齢になっても仕事を続ける人が増加しているのである。

様々な職場環境において、高齢者の身体特性を考慮し、快適な職場環境を整えることが求められている時代であると言えるだろう。高齢者も含めた快適な視環境の構築は的確な照明計画によって実現できる。

高齢者に適した視環境を探るために、様々な研究が行われている。
「オフィス作業時の照度と色温度変化が中高齢者の疲労と視認性に及ぼす影響」の実験では、疲労や視認性低下につながる照度と色温度の変化条件は、年齢により異なることが確認された。疲労軽減と視認性向上を両立するオフィス環境の構築のためには、加齢による目の特性等を考慮しながら、各人に適した光環境を検討していくことがこれからの課題だとしている。*2

また、「ものの見え方に着目した高齢者のための照明の検討」の実験では、高齢者のための快適な視環境には、明るく演色性の高い照明が必要であるということが確認された。そして演色性だけではなく、感性を考慮した照明の評価方法を明らかにすることが高齢者の最適な照明条件の解明に繋がるとしている。*3

現在、就労高齢者の望ましい視環境に関しては、まだ解明すべき課題が多く、さらなる検討が必要な状況である。高齢者にとって快適な視環境の構築に必要な条件について、これからの研究に期待したい。

参考資料
*1 https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1292.html#:~:text=%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E5%B0%B1%E6%A5%AD%E7%8E%87,%EF%BC%85%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
*2 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhesp/43/0/43_37/_pdf/-char/ja
*3 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjske/11/3/11_373/_pdf/-char/ja