純白の世界の中で

新しい年が明けて、冬の寒さの中、雪が降る。

白い雪が降って全てを覆った景色は、静かな美しさに満ちている。
この季節だけの、純白の世界。

降り積もった新雪を見るとその結晶が見えることがある。左右対称形の模様はどれも自然が作り出した美しい芸術作品だ。
日本では平安期には雪の結晶が六角形であることが知られていた。
そして江戸時代になると雪の結晶の模様が庶民の間で流行し、着物や小物、茶碗の模様にまで使われたという。

日本人の繊細な感性による雪を表す言葉は実に多い。
降る状態によって、こな雪、つぶ雪、わた雪、ぼたん雪、みぞれ雪、べた雪など。積もった雪は新雪、こしまり雪、こおり雪、ざらめ雪、しもざらめ雪など。その他にはなごり雪、どか雪、ささめ雪、白雪、など。
刻々とニュアンスを変えていく雪の表情一つ一つを大切にし名付けられた雪達。自然をこよなく敬う日本人の精神と愛情が感じられる。

雪は太陽光をほとんど吸収せずに散乱光として反射するため真っ白に見える。新雪の日射の反射率は約80パーセントで、天気の良い日には眩しさを強く感じる。
雪面は夜でもあたりを薄明るくしてほのかな明るさ(雪明り)を作り出してくれる。

 

汚れたものや見たくないもの全てが白一色で覆い尽くされた雪の世界を見ると、自然と心まで洗われるような新鮮な気持ちになる。子供の頃、雪が降ると天からの贈り物のようで嬉しくて、雪にまみれながらも楽しんで遊んだことを思い出す。
とりわけ、降雪地帯に住まない人にとって、雪の白さはほんのひと時の非日常の世界。

特別な瞬間、純白の世界に佇み時の流れを忘れてしまう世界。
今年も、そんな世界に出会いたい。