新しい照明分野11―メディアアート③ インタラクティブアート

インタラクティブアートは作品と観客による双方向の対話や、観客の参加によって成立・完成するアート作品である。双方向芸術とも言われる。

主に人間の五感に作用するような運動・光・音によって表現を行い、その作品は国籍や年齢に関係なく、幅広い人達が楽しむことができる。制作者がプログラムした温度、動き、近接性、気象現象などのイベントを測定するセンサーを使用し、観客と機械はリアルタイムでの対話の中で、ユニークな芸術作品を生み出すことができる。

広義のインタラクティブアートは、だまし絵や隠し絵として中世の頃から存在していた。
それらの作品には、目の錯覚を利用して一つの図像が多義に見える「多義図像」や、三次元ではありえない物体を二次元の平面に描くもの等があり、見る人を不思議な世界に誘うものであった。

コンピューターを活用したインタラクティブアートが注目を集めるようになったのは、1970年代後半であり、1980年代以降は、国際的に活躍する作家が続々と現れた。従来の完結した芸術作品とは異なり、作家や観客の参加の姿勢により、次第に作品が進化していくことができる芸術であり、参加者自らがクリエイティブな体験ができる。また、子供の感受性の向上と、運動する機会の増加に寄与できる芸術としても期待されている。

このような観客を主体とする体験を重視した芸術において特に光の要素は大きい。光に反応するセンサーを利用し、光の種類によって音を出したり、色や形を変えたり、複雑な動きの変化を生んだりなどを楽しむことができる。

光は波長や明度、色などの条件を変えることで様々な表現が可能である。光を使ったインタラクティブアートは、光と色彩の効果による身体的感覚体験に加え、光の造形による物質の微細構造の観察や、人間の感性や感覚に訴えかける問題提起の創出など、アートと人間の間に深いコミュニケーションを生み出すことができる。

インタラクティブアートは、センサーやコンピューター技術などの高度な技術に注目しがちであるが、その根源にある人間の創造性にかかわる双方向の対話の内容にこそその価値を見出したい。

インタラクティブアートは、光の効果を利用しながら個々の観客の創造性に応じた表現をすることで、観客に驚きや喜びを与え、心を豊かにすることができる芸術と言える。今後も技術の進歩とともに時代の精神を吸収しながらさらに成熟していくことが期待される。

参考資料
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88-818907