グラデーションに色づく頃に

秋になると日本各地で美しい紅葉が見られるようになる。
紅葉は落葉広葉樹の葉が落葉となって木から落ちる前に緑色から黄色や赤色に変わる現象だ※

秋が深まって、日が短くなり気温も下がってくると紅葉が始まる。強い太陽の光が当たり、葉が乾燥しないような適度な湿度があるという条件に加え、昼夜の気温差が大きいほど紅葉は美しくなる。また、同じ木でも日光の当たり方により葉の色の変化に違いが出る。

日本人はもみじ狩りと名付けて紅葉を楽しむ習慣があるが、このような習慣は江戸時代中期から盛んになったと言われている。
平安時代には、特に酒宴の席を持ったりせず、静かに遠くの山の紅葉を眺める形だった。
夏の盛んな日々から落ち着いた秋色へ、季節の移り変わりを無常感を持って眺めていたのかもしれない。

今年も自然の織りなす鮮やかなグラデーションに彩られた紅葉の景色。
秋の澄んだ空気と光の中で、厳しい冬の寒さに向かう前の華やぎのある美しい景色として見る人の心に、深い感銘を与えることだろう。

 

※紅葉のしくみは黄色の葉と赤色の葉で異なる。
樹木の葉にはクロロフィル(緑色成分)とカロチノイド(黄色成分)が含まれている。
黄色に変化する樹木は、気温の低下により葉に含まれているクロロフィルが分解されてカロチノイドの黄色が目立つようになる。
赤色に変化する樹木は、気温の低下により葉の中の物質が茎に移動できなくなり、光合成で生産された糖が葉に留まり、葉の中の糖度が上昇する。そこに日光が当たると糖が化学反応を起こしアントシアニンができ、葉が赤くなる。