「もし下を向いたままならば、虹を決して見つけることはできないだろう。」

チャールズ・チャップリン(1889年~1977年)は英国の俳優、映画監督、コメディアン、脚本家。世界の三大喜劇王と呼ばれる。単なる笑いのみの追求とは異なり、その作品には笑いの陰に鋭い社会風刺、下町に生きる庶民の哀愁や怒り、悲しみまでも描き出している。

チャップリンはイギリスで舞台芸人の両親のもとに生まれた。しかし1歳の時両親は離婚し、母のもとで暮らすが、5歳の時に歌手である母の声が出なくなり、精神に異常まできたし精神病院に入ってしまい極貧生活を強いられる。チャップリンは4歳年上の兄と共に、孤児院や貧民院を転々とし、床屋、印刷工、ガラス職人、新聞の売り子などをして生活をしなければならなかった。しかし舞台に立ちたいという夢は捨てずに、俳優あっせん所に通い、演劇俳優、パントマイムなどもしていた。そしてこの苦しい時期でもチェロやヴァイオリンの練習をしており、後に名曲「スマイル」をはじめ多くの名曲を生み出した彼の音楽的才能を育くんでいた。

19歳で俳優としてデビュー、25歳の時に映画デビューした後は、大スターとなっていく。その後、映画監督、国際的大スターとしての彼の地位は不動のものとなる。

あの有名なチャップリンの山高帽子をかぶった格好は、彼の思いが形になって生まれたものである。小さな口ひげは自分の虚栄心、不格好で窮屈な上着とダブダブのズボンは人間が持つ愚かしさと不器用さ、同時に物質的な貧しさにあっても品位を維持しようとする人間の必死のプライド、大きなドタ靴は貧困にあえいでいた自身の幼い頃の忘れえぬ思い出、それらを表現して個性的な人間「放浪紳士チャーリー」が生まれたとチャップリンは述べている。

もし下を向いたままならば、虹を決して見つけることはできないだろう

―辛いことや悲しいことがあって落ち込んでばかりいたら、成功したり幸せになったりはできないだろう。顔を上げて空を見上げてみよう。きっと虹を見つけることができる。―

この格言は、「サーカス」という映画の中の言葉であり、幼い頃の辛く、悲しい極貧の日々でも希望を捨てずに頑張った彼の実感のこもった言葉である。そしてこの言葉からは空にかかる光輝く虹を「希望」や「幸せ」の象徴として描く映像的な美しい効果も感じることができる。
世界の人々に笑いと共に幸福や愛や平和のメッセージを送り続けたチャップリン。その彼の強い想いは、映画や歌の中に込められており、これからも彼の作品に触れる多くの人々を感動させ、楽しませていってくれることだろう。