「教育は貨物の充填ではない。それは炎の照明である。」

ウィリアム・バトラー・イエイツ(1865~1939年)はアイルランドの詩人・劇作家。1923年にノーベル文学賞を受賞し、20世紀の偉大な詩人の1人とされている。イェイツの作品は英語圏では中等教育の段階から広く教材として用いられており、作品中の詩句は様々な映画や音楽で多用され、現代の人々にも影響を与え続けている。

イェイツは1865年アイルランドのダブリン県で画家の父のもとに生まれた。イェイツが2歳の時に一家はロンドンへ移住したが、イェイツは母の祖国アイルランドをたびたび訪れてアイルランドの習俗や伝説に触れる機会があった。そのアイルランドでの経験が後の詩作の着想源となっている。

19歳の時に美術学校に入学するが、2年で画家になることを諦めて退学し、詩人となることを決心し創作を始める。24歳で初の詩集を刊行し、ケルト人の英雄が魔法の島々をめぐる幻想的な物語詩や哀愁に満ちた繊細な叙情詩で注目された。イェイツの初期の作品は現実の社会に背を向け、神話と魔術と夢の領域に詩の題材を求める神秘主義的で芸術至上主義的な作品となっている。

その後、彼は民族文学普及の実践運動に参加したり、39歳の時に「アベイ劇場」を新設し、その活動はアイルランド文芸復興の黄金時代を招くことに貢献した。そしてイェイツの作品は様々な経験を経てそれまでの神秘主義的作風から政治と社会への鋭い批評が全面に出る象徴詩的作風へと変化していった。

また、彼は日本の能楽に大きな影響を受け、「鷹の井戸」などの作品を生んだ。能の簡潔な舞台や様式の重視、非現実的な舞台設定などの要素がイェイツの象徴主義に通じたことが能に関心を持つようになった背景にあると言われている。

57歳の時にはアイルランド上院議員となり5年間務めた。1939年73歳で保養先のフランスで生涯を閉じて埋葬され1948年に故郷アイルランドに移され埋葬された。

教育は貨物の充填ではない。それは炎の照明である

―教育とは知識を詰め込むことではない。学ぶ意欲を持たせてあげることで自分の周りを明るく照らしてくれる燃える炎の照明のようなものである。―

私達は知識を得ることで能力が高まるように思ってしまうことがあるが、自分がいかに不足しているものがあるかに気付き、そのために学ぶことの大切さに気付き、学ぶことによってこそ成長することに気付かなくてはいけない。そして自らの学ぶ行動を起こす原動力である情熱に火をつけるものが教育である。イェイツはそう言っているのではないだろうか。

イェイツはその生涯において、様々な環境や出会った人々などに影響を受けて、詩作で表現する内容や主張が変化していった。その生涯を常に貫いて芯にあったのはアイルランドへの愛着心である。その精神により作成された詩がアイルランドの国民全体の精神を表現する高度に芸術的な形式を持った詩として高く評価されてノーベル文学賞を授与されたと言われている。

常に新しい視点で物事に対峙し、学び、自らの概念を変化させていったイェイツの姿勢こそがこの格言にある教育の精神を体現したものと言えるのではないだろうか。




・ウィキペディア
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