視覚と光7─食材を引き立てる色と光

スーパーなどで生鮮食料品を新鮮で鮮やかに見えて購入した食材が自宅の蛍光灯で見ると売り場で見た時よりも色がくすんで見えることがある。生鮮食料品の売り場では新鮮でおいしそうに見せられるよう、波長を選択して放射するダイクロイックミラ-付きハロゲン電球などの照明器具を使用しているからである。

光スペクトル制御を行った照明をすると肉は赤味を増し、果物は色鮮やかに見えて新鮮でおいしそうに見える。最近では赤色成分のピーク波長を長波長側にシフトすることで、肉やマグロなど赤みの強い色をより鮮やかに再現できるLED照明などが製品化されている。

また、野菜売り場ではみかんや栗は赤いネットに入れられ、おくらや枝豆などは緑色のネットに入れて陳列してある。これはある色が他の色に囲まれた場合、周囲の色に近づいて見える色の同化現象を利用したもので、中の食材をより新鮮で色鮮やかに見せるための工夫である。

食材と同様に、料理もおいしそうに見せる光がある。赤い波長を含んだ「電球色」の光は、料理を彩る野菜やソースなどの赤みを引き立たせ、より食欲をそそる。そのためダイニングの照明には色温度の低い「電球色」が適している。

また、光は味覚に影響を与えることが分かっている。色温度の高い昼光色や昼白色の光では味覚に敏感となり、色温度の低い電球色の光では味覚の感度は上がらないと言われている。調理の際には、色温度の高い照明を、食事の時にはリラックスできて美味しく味わえる色温度の低い照明を備えたい。

ハネス・グーテンベルク大学が行った実験では部屋の中の光がワインの味に影響を与えるという。赤い色の照明のもとで飲むワインは、白い照明の時のワインの味よりも熟していて甘く、また風味も同じく向上して感じるというものだ。

食材や料理を美味しく見せたり感じさせる光の効果は私達の食欲をそそり美味しく食するための大きな要素である。照明を賢く利用して豊かな食生活に結び付けたいものである。